もくじ
はじめに
あなたは大腸内視鏡検査を受けたことがありますか。
初めてだったらとても不安ですよね。
そんなあなたへ読んでいただきたい大腸内視鏡検査の体験記です。
少しでも検査前にシミュレーションの一助になれば幸いです。
経験者なら「そうそう、あんなことあったよな」と思いだすかも。
検査の予約
12月に受診した人間ドックで異常が指摘され、精密検査で大腸内視鏡を勧められました。
ドックの紹介状を近所のクリニックに持っていったのが、年末の診療最終日12月29日。
ところが、数ヶ月後まで予約が一杯とのこと。
新型コロナの影響もあって予約枠を縮小しているそうです。

こりゃ困ったなぁ。。。もし悪性だったらどうしよう。。。
と思っていたら、たまたまキャンセルの連絡が入りまして

年明け初日ならできそうですが、どうしますか。
と言われ、とり急ぎ1月4日に検査を予約。幸運でした。
大病院か専門クリニックか
大腸内視鏡検査は今回で3回目の経験です。
この検査は大きな病院で受けるパターンと専門クリニックで受けるパターンがあります。
患者側からすると決してお手軽な検査ではありません。
検査そのものは15~30分ですが、数日前からの準備と事後の休養も必須で、「当日検査が終わったら仕事しよう」は正直無理です。
15年前、初めての時は大きな病院で検査してもらって2泊3日入院しました。
いわゆる「検査入院」です。その時は仕事の都合をつけるのが大変だった記憶があります。
入院でも、日帰りでも、前日の夜から当日午前中は検査準備に専念する必要があります。
その準備は後述するように大変なので、初めての方は入院して病院にお任せする方が安心かもしれません。
しかし、私が今回選んだのは日帰り検査できる専門クリニックです。
内視鏡検査は先生の技術の差が出る検査だと個人的に思います。
検査中の苦痛を避けるカメラの操作テクニック、病変を見逃さない観察眼。
大きな病院にお勤めの先生はもしかしたら内視鏡操作の得意不得意があるかもしれません。
しかし専門クリニックの先生は間違いなく得意なのだと思います。
だからこそ独立して自前で機器を購入して開業されているのですから。
など考えると、専門のクリニックがオススメかもしれないです。
あくまで個人的感想ですけれど。
腸の中を綺麗に
検査前までの準備が一番大変なんです。
カメラを尻から入れて腸内を観察していくため、中身をすべて綺麗に空っぽにするのです。
腸の中が綺麗になりきっていないと、病変の発見率が大きく下がるともいわれます。
例えば、ひどい二日酔いのとき「いっそのこと胃を取り出して、裏返して洗いたいぐらいだよぅ」と思ったことはありませんか。
そうできれば一番スッキリするかもしれないのですが、胃腸を取り出して洗うことはできませんよね。
では検査のために腸内をクリーニングするにはどうするか。
そう「強制的に全部出しきる」のです。これしかない。
準備は3段階
検査に向けておおむね3段階に分けて準備していきます。
- 検査日の前から繊維質や脂肪分を含むものをさける
- 前日夜に強力な下剤を服用
- 当日は「腸管洗浄剤」を大量に飲む
上記の(2)までを自宅で実施することで、日帰りの検査が可能になるんですね。
(今回はコロナ対策のため(3)も自宅で実施しました)
入院する場合は(2)の前日夜の段階からを病院の指導下で実施することになります。
それぞれの段階を説明していきます。
大腸内視鏡検査の実際
準備第1段階「前日までの食事」
検査予約の時に一通りの事前準備の説明を受け、前日は消化のいいものしか食べないよう指示されます。
しかし私は前回、なかなか綺麗にならずに苦労したので、数日前からかっちり準備することにしました。
避けるものは二つ「食物繊維」と「脂肪分」です。
野菜や揚げ物、乳製品、あと「ごま」とか「海藻」「ナッツ類」、種付きの果物なども避けなくてはなりません。
私の場合、1月4日が検査日だったので、元旦から食事制限を始めました。
「もち(のりなし)」「釜玉うどん(ねぎなし)」「食パン(バターなし)」「魚肉ソーセージ」・・・
家族が、美味そうな天ぷらや煮物、黒豆に数の子などの正月料理を食べていても我慢我慢。。。
準備第2段階「強力な下剤 マグコロール散」
検査の前日。
早めの夕食を食べおえたら腸内洗浄の始まりです。
まず強力な下剤を服用します。
「マグコロール散」という粉ぐすり。

パッケージに(大腸検査、腹部外科手術前処置用下剤)と書いてあるのがえらく恐ろしい。
これを50g、水150gに溶かします。薬剤50gというのは角砂糖15個ぐらい。
これを小さい紙コップに入れるイメージです。
薬剤は溶けやすいのですが「重湯」ぐらいのブツになります。見た目からしてとてもヤバイ雰囲気。
これを一気に飲み込みます。味は見た目に反して、駄菓子屋で売っていた「粉のラムネ」みたい。
ちょっと炭酸ぽいシュワシュワの感じもラムネに似ています。
苦くて飲みにくい味ではないです。むしろ飲みやすい。
でも、飲んだ瞬間から「なんか変なものが入ってきたぞ」と胃がモゾモゾ動き出すのが感じられました。
看護師さんからは事前に

朝まで何も起こらない人も、一晩中眠れなくなる人もいます
と聞いていました。
自分はどちらのタイプかなとドキドキしながら就寝。
腹の中に何か重いものが入っているような感じ。zzz。
そして午前3時前。
下腹部の鈍痛で目が覚めます。
市販便秘薬のCMで「お腹が痛くなりにくいの」というコピーを聞きますが、バリバリの医療用下剤にはそんな優しさなど無縁。
腸内を空っぽにするのが目的の超強制排出ウエポンが腹の中で発動中、トイレに猛ダッシュ。
それからというもの、朝まで全く眠れませんでした。だって波のように強烈な便意が襲ってくるんだもの。
恐るべし医療用ファイナルウエポンって感じでした。日が昇るころにはすでにヘトヘト。
準備第3段階「腸管洗浄剤 モビプレップ」
そして検査当日は、別の薬剤でさらに追い込みをかけていきます。
「腸管洗浄剤」という、名前からして恐ろしい下剤。これを2リットル近く腹に流し込まなくてはいけないという、恐ろしいタスクが待ち受けます。
腸管洗浄剤はその名も「モビプレップ」
私はこの際「モブちゃん」と命名しました。


中身の大きさは2リットルペットボトルぐらい
このモブちゃんは飲みやすさなど考慮されていません。
(検索してみると、昔からあるものよりは飲む量も少なくなって進歩しているそうですが)
味はどう表現したらいいか難しいけれど、金属と塩の味がするポタージュ。
見た目はスポーツドリンクっぽいのですが、モブちゃんはごくごく飲めるようなものではありません。本能が「こんなもの飲んだら腹壊すぜ、やめておきな」と訴えてくる。
そりゃそうです、腹を下すためのクスリなんだから。
このモブちゃんを少しずつ、2時間ぐらい飲み続けるわけです。
モブちゃんの合間には普通の水も大量に飲むように指示されていて、どんどん腹が薬と水でタプンタプンに満たされていきます。
飲み始めて1時間くらいするとモブちゃんが大腸まで到達します。
そこからは否応なしにトイレとお友達。
上からモブちゃんを強制的に飲んでは下から出す。
このエンドレスのルーティン。The 腸管洗浄。
昨夜の強力下剤の効果もあり、水しか出ませんが、これがだんだん透き通ってきます。
洗浄が進んでいることを否応なしに実感します。
これが完全に透明になるまで、モブちゃんを飲み続けないといけません。
検査の全般を通じ、このステップが一番苦しいものでした。
これを飲み終わると検査に臨めるようになります。
私はここまでを自宅でこなしました。
ということは、ここからクリニックまで移動しないといけません。
歩いているうちに次の腹痛がきてトイレに行きたくなってしまったらどうしよう・・・
とても心配になってタクシーを呼んで移動しました。
検査室へ
クリニックに到着、いよいよ検査の本番です。
更衣室で検査着に着替えます。検査着の下には「後ろ穴あき」パンツを着用します。
紙パンツを後ろ前にはくような感じ。
点滴を腕に刺していただき、生理食塩水がポタポタ落ちるのを眺めていると検査時間になりました。
検査室に入り先生にご挨拶。「よろしくお願いします」
ストレッチャータイプのベッドに横たわり、血圧計と、今や有名になったパルスオキシメーターを装着します。
左を下に横向きになり、膝を抱えるような姿勢になるよう指示されます。

検査中
血圧を測定後、点滴のルートから鎮痛剤が入れられ、ほぼ同時に尻穴にもゼリー状の麻酔薬が塗り込まれました。
その後、鎮静剤が流し込まれるとなんだかふわふわな気分に。
「始めますね」の声と同時にケーブルが下から差し込まれていきます。
初めての人はなんともいえない違和感を感じるかもしれません。
でも緊張せず力を抜くよう心がけます。力むとかえって上手くいかないようです。
するするとケーブルが入っていきます。空気を入れて腸を膨らましながら進んでいくと説明がありました。
下水の高圧洗浄を見たことはありますか。あれとイメージが似ているなと思いました。
水の代わりに空気を吹き出しながら進みます。下水洗浄ではケーブルをガシガシ押し込んでいく感じですが、検査は先生の丁寧な技術で腸の曲がり角も巧みにコーナーリングしていきます。
他の方の体験記などで、カメラが進むときに腸の曲がり角にあたって痛い、などの声も聞かれますが、私は全く大丈夫でした。先生の技術に感謝。
カメラは大腸をさかのぼり、最後は小腸の入り口まで到達します。
大腸のなかをケーブルが一周しますが、腹痛などはありません。
検査中にポリープなどが見つかったら、そのままケーブルの先からハサミを出して切り取るともいわれていました。しかし幸運なことにそれはなし。
しかし、あんな細いケーブルにカメラ、ライト、ハサミ、止血の道具が入っているなんて、医療技術の進歩はすごいですね。
検査終了 異常なし
正味10分ぐらいだったのでしょうか、自分の感覚的には「あっという間」に検査は終わりました。
カメラが抜かれ、血圧と酸素飽和度を再確認されると、鎮静剤の中和剤が点滴に入れられます。
ストレッチャーのまま休養室へ運ばれ、

お疲れ様です。こちらでしばらくお休みくださいね
と一人きりに。
すぐに気持ちよい眠気に襲われ、ウトウトしていました。今朝は下剤で3時から寝られなかったもんな…
気がついたら1時間以上経っていて、看護師さんから声を掛けられて、着替えをして診察室へ。
先生から検査結果を聞きました。

今回の検査では異常は見つかりませんでした。3~5年後にまた検査に来てください。
ということでした。
よかった。とても気が楽になりました。
検査はこれで終わりました。
お会計
気になるお会計ですが、あくまで私の場合、
事前の血液検査と腸内洗浄剤の処方などで約5,000円、検査本番で約6,000円、
合計で1万円ちょっとでした。
これは検査の時に異常が見つからなかったパターンになります。
事前にもらった説明書では、病変切除や生検などが入ると合計3万円ぐらいになることもあると書かれています。
おまけコーナー
ここまでで大腸内視鏡検査は終わりです。
おかげさまで異常は見つからず、一安心でした。が・・・
検査のあとにやらかしてしまいました。
おまけエピソードですが、知っておいて損はないです。
よかったらお付き合いください。
検査後に起こったこと
検査が終わって、看護師さんからこの後の注意事項の説明がありました。

鎮静剤の影響が残っているので、今日は絶対に車やバイク、自転車の運転はしないでください
はい。それは事前にお聞きしています。

それから、よく検査のあとモノをなくす方がおられます。それも注意してくださいね
え?どういうこと?
なんか眠気は残っている気がするけれど、意識ははっきりしています。
むしろよく寝たあとのような爽快な感じ。
まっすく歩けるし、なんならバイクで帰れなくもないくらい。
などと思いましたが、わかりました気をつけましょう。
病院の会計をすまし、駅まで歩き、一駅乗って、コンビニに寄り帰宅。
「まずは異常がなくてよかったな」など思いながら、十何時間ぶりの食事。
うん。空っぽの腹に久しぶりに食べものが落ちていく感覚はなんか幸せ。
そうだ、検査に持っていったカバンの中身を片付けなきゃ。
パスケースがない
…あれ?パスケースが見当たらないぞ!そんなバカな。
パスケースには診察券、保険証、免許証、マイナンバーカードも入っていて、私にとっては最重要アイテム。
半ばパニックになりながら、カバンの中や上着、ズボンのポケットをくまなく探したけれど見当たりません。
え~?どういうこと?電車で落としたか?改札入ったときに電車が入線してきていたから少しダッシュしたよな。
あの時に落としたのか?
乗った電車も、何両目に乗ったかも覚えています。
ここまではっきりしていれば鉄道会社で見つけてくれるんじゃないかな?と駅に電話します。

〇時〇分発の〇〇行、〇両目に乗ったのですが、落とし物が届けられていませんか

しばらくおまちください

・・・センターにも確認しましたが、届けはないようです

こちらの連絡先を伝えるので、出てきたら連絡いただけませんか

当社では大量の落とし物が届けられるので、個別のご連絡はしていません
恐れ入りますが、明日にでも改めてお客さまセンターへご連絡いただけますか

そうですか・・・明日センターへ電話させていただきます
そりゃそうだよな。駅員さん、忙しいところすみませんでした。
じゃぁ、病院で着替えるときに落としたのかな?その可能性もあるな。
もう閉院時間過ぎているし明日連絡してみるしかないか。
寝る前にもう一度カバン、上着、ズボンなど探しますがみつかりません。
(これは明日にならないとどうしようもないな)
そう思ってとりあえず床についたのですが、
(アレを本当になくしたとしたら手続きが大変だな。免許センターでしょ、市役所でしょ・・・)と
頭の中で不安がエンドレス。
看護師さんに言われたセリフが何度も頭の中でリピートしています。

それから、よく検査のあとモノをなくす方がおられます。それも注意してくださいね
せっかく無事に検査が終わって、ゆっくり休めるはずだったのに・・・
翌朝発見
さまざまな面倒な手続きを考えたりして、よく眠れない夜を過ごした翌朝。
ため息をつきながら着替えていると、部屋のイスの脚もとに探していたパスケースが。
え?昨日あんなに探したのに!
しかし、カバンに上着、ズボン・・・必死に捜索していたのはこの部屋だよ。
なんで見つけられなかったのかなぁ。でもまぁ、よかったけど!

それから、よく検査のあとモノをなくす方がおられます。それも注意してくださいね
そうかクスリか!
鎮静剤の影響で、視界に入っているものが認識できなかったとしか考えられません。
自覚はなかったけれど認知能力がかなり低下していたのでしょうか。
これって「自分だけは大丈夫」と思っていても、やらかしちゃうパターンの典型ですよね。
今回に限らず、「自分だけは大丈夫」には気をつけていかなくてはいけないということを学ばせていただきました。
いずれにせよ、ホントに恥ずかしいエピソードを残して、私の内視鏡検査は終わりました。
これで本当に終わりです。長文お付き合いいただき、ありがとうございました。
これまでの体験記が少しでも検査に臨まれる方の参考になれば幸いです。
あなたの検査結果が良好なものでありますよう、お祈りしています。